豪華キャストのVシネマ 大怪獣のあとしまつ

大怪獣のあとしまつ WHAT TO DO WITH THE DEAD KAIJU? 【Amazon Prime Video】

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 「時効警察」の脚本・演出を手がけた三木聡が監督を務めた2022年の特撮パロディ映画。Hey! Say! JUMP の山田涼介が主演を務め、土屋太鳳や濱田岳のほか、西田敏行や笹野高史などベテラン俳優も出演している。

 国中をパニックに陥れた巨大怪獣が謎の閃光に撃たれて絶命し、日本は平和を取り戻す。「希望」と名付けられた大怪獣の死骸処理を巡って政府で検討が始まるが、その巨大さと省庁間の利害対立などにより処理計画の策定は難航していた。迷走の末、怪獣対策にあたっていた政府直轄の特務隊に後始末が託され、帯刀アラタ(山田涼介)が責任者に任命されるが、元特務隊員で総理秘書官の天雨正彦(濱田岳)が介入してくる。同じく元特務隊員だった雨音の妻ユキノ(土屋太鳳)は環境大臣秘書としてアラタに協力するが、時間の経過とともに死骸の腐敗が進み、内部に溜まったガスが大爆発を起こす危険性が高まる。

 公開前にさかんにテレビで告知を行っていたことを思い出し、暇つぶしのために(明言!) Amazon Prime Video で鑑賞した。怪獣の死骸をどう処理するかという「必要不可欠」な着眼点は面白いし、避難区域の拡大や凍土壁の設置、汚染水の海洋放出など福島原発の事故処理への痛烈な批判になっている点も買えるが、思わせぶりな割にスカッとしない物語だった。怪獣(禍威獣)を扱った作品として直後に公開された「シン・ウルトラマン」に上書きされた感もある。もっとも、この作品は2020年の春にクランクインしているので、敵はウルトラマンや怪獣ではなく、新型コロナウイルス感染症だったということか。ストーリー上で一番気になったのは主人公アラタの秘密だが、彼の過去に起こった出来事や「デウス・エクス・マキナ」は必要だったのだろうか。

 風刺を意図したパロディという点では筒井康隆原作で2006年に公開された「日本以外全部沈没」を思い出すが、はっきりパロディと打ち出してあえてチープに仕上げた「日本以外全部沈没」に対し、「大怪獣のあとしまつ」はパロディとしてもシミュレーションとしても中途半端に感じられた。文化庁の助成を受けているので真正面から政治風刺はできないのかもしれないが、政府や与党の「聞く力」を発揮しない政策強行や野党のピンぼけな対立姿勢のアピール(最近では野党第一党が「増税なら衆院解散・総選挙で国民の信を問え」と首相に迫ったが、選挙をしても与党が勝って「信を得た」ことになってしまうのに分かっていない)、誤ったポピュリズムなど、描くべきものはたくさんあるはず。企画当初は低予算での製作も検討されたと聞くが、その方がねらいを果たせたのではないかという気もする。主役級ではない個性的なバイプレイヤーやセクシー系女優をキャスティングして実験的な作品を多く生み出した昔のVシネマのように、人気アイドルや人気女優に頼らず冒険してほしかった。まさに Prime Video で鑑賞すべき作品といえるかもしれない。

作品データ
監督:三木聡 出演:山田涼介、土屋太鳳、濱田岳他
公開:2022年 製作国:日本

大怪獣のあとしまつ 豪華版 [Blu-ray] - 山田涼介, 三木聡
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