三眼ノ村・弐/輪廻の章 Art of the Devil Ⅲ(Long khong 2) ☆ 【DVD】
「三眼ノ村・壱」の前日譚で、タイでは2008年に公開されている。日本では「カリテ・ファンタスティック!シネマコレクション2021」で上映され、2部作併せて待望のDVDの発売にこぎつけた。前作との違いは呪術による復讐よりも拷問に近い残酷なシーンが多く、目を背けたくなるような残虐さが売りになっている。
タ(トーンパオ・トーンヌート)の実母ドゥアンは、ドゥアンの妹の家庭教師パノー(ナパックパパー・ナークプラシット)に魅せられた夫によって毒殺され、パノーが後妻の座に納まる。13年後、高校生となったタはパノーが同僚と不倫していることを知り、それを暴露したことでパノーは精神を病んで入院している。タの祖父は黒魔術でパノーの肉体に娘ドゥアンの魂を蘇らせようと儀式のために遺体を保存していたが、タの成長を待ってパノーを病院から連れ出し、儀式を行う。儀式は成功したかに見えたが、封印したはずのパノーの魂が甦り、自分を苦しめた一家へ復讐を始める。
1作目を見た直後でも時系列で若干の混乱を感じるので、2作目だけを見る人は全く意味不明に違いない。構成が雑だということではなく、それだけ凝って作られているということなのだが、一番の問題は登場人物が増えすぎたことか。1作目も登場人物が多かったとはいえ、物語を動かすのはタを含む高校の同級生たちとパノーや体育教師オーランに絞られる。2作目では三眼ノ神を我が物にしようとする霊媒師が加わったことで余計に話がややこしくなった。そのために因果応報という仏教的なテーマが伝わりにくくなり、パニック・ホラーというよりも、グロテスクなシーンの印象だけが強く残る作品になってしまった。もしかすると当時ヒットしていた「SAW」シリーズなどの影響もあるのかもしれない。
お目当ての女優マミー(ナパックパパー・ナークプラシット)が実質的なこの作品の主役。1作目のようにセクシーなシーンはないものの、ゾクッっとする美しさを見せる場面が多く、後半に見せる涙はこの作品を単なるホラー&スプラッター映画で終わらせてはいない。因果応報のテーマが伝わりにくいとは書いたが、ラスト10分では三眼ノ神に囚われたパノーにも黒魔術にすがらざるを得なかった悲しい過去のあることが明らかになり、見事に円環を閉じて1作目へとつながっている。英語字幕で見たときは釈然としないところもあったが、日本語版で見て最後は納得。やはりタイ映画は侮れない。
作品データ
監督:ローニン・チーム(パシット・プラナジャン他) 出演ナパックパパー・ナークプラシット、トーンパオ・トーンヌート他
公開:2008年 製作国:タイ
三眼ノ村(弐) 輪廻の章 - ナパックパパー・ナークプラシット, ローニン・チーム(パシット・プラナジャン)
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