
2005年のタイのホラー&スプラッター映画だが、新宿シネマカリテの「カリテ・ファンタスティック!シネマ・コレクション2021」で上映されたことから日本語版のDVDの発売につながったらしい。英題は「Art of the Devil Ⅱ」となっているが、日本語版も発売されている「アート・オブ・デビル」(2003年)とはストーリーの上でのつながりはない。タイでの公開当時にハリウッドがリメイク権を獲得したという情報もあったが、その後のことは伝わっていない。
バンコクで大学生活を送っているキム(ハタイワン・ガームスコンタプーシット)とポー(アカリン・シワポンピタック)は、高校時代の同級生5人で夏休みに帰省する。進学せず村に残ったタ(トーンパオ・トーンヌート)との再会を喜ぶ彼らだったが、タの父親と弟は非業の死を遂げており、タも詳しい事情は語ろうとしない。2年前、高校生だったキムたちは、タの義母でもある教師のパノー(ナパックパパー・ナークプラシット)が体育教師のオーランと不倫関係にあること知る。動かぬ証拠をつかむため盗撮を試みた彼らだったが、それに気づいたオーランに退学をほのめかされ、反対に体罰や虐待を受けることになる。オーランに強い恨みを抱いた彼らは、黒魔術による報復を霊媒師に依頼するとともに、盗撮した映像を学内で放映する。その結果、パノーは精神を病み、オーランは全身から釣針が飛び出す謎の死に方をしていた。
この作品はタイに惚れ込み、2年おきにバンコクを訪れていた時期に購入して鑑賞。現地ではもちろん、日本でもネット通販でタイ映画を買い漁っていたが、タイでの公開から5年後の2010年に英語字幕で見ている。呪われた体育教師の身体から釣針が飛び出したり、幼馴染の背中の皮膚を突き破ってヤモリが現れ、ご丁寧に「トッケイ」と鳴いたりするグロテスクなシーンはインパクトが大きかった。他にも麻酔薬で身体の自由を奪い、両脚をバーナーで炙ったうえに、その焼けただれた皮膚を剥ぎ取るシーンなどもあり、呪いのバリエーションというよりも、拷問のバリエーションのオンパレードで、ユーモラスにも感じられる徹底したおぞましさは、サム・ライミの「死霊のはらわた」を彷彿させた。それまでもタイの仏教観を色濃く反映したタイのホラー映画は見ていたが、当時、アジアン・ホラーの一つの転換点になるのではないかと評価した作品だった。しかし、当時は日本語版が発売されておらず、英語字幕で見ざるを得なかったためにストーリーの細部は不明。ヒロインのキムを身を挺して守ろうとする幼馴染タの正体はさすがに分かったものの、最後の最後で明らかになる「呪いの連鎖」については、今回12年の時を経てやっと納得できた。
ちなみに、恐ろしくも妖艶な美しさで、呪術を操る女教師役を魅力的に演じたナパックパパー・ナークプラシットは、2002年の「バタフライ・マン」というイギリス映画では、エキゾチックな容貌はそのままに優しく芯の強いヒロンを魅力的に演じている。すぐに続編をネット通販で購入したのは彼女に魅せられたからといっても過言ではないが、その他の彼女の出演作品を入手することが難しいのが悔しい。
作品そのものは18年前のものということになるが、タイの田舎という舞台設定が効いており、今見ても全く古さを感じさせない作品だった。併せて購入した前日譚の「三眼ノ村・弐」への期待も膨らむ。
作品データ
監督:ローニン・チーム(コンギアット・コムシリ他) 出演:ハタイワン・ガームスコンタプーシット、ナパックパパー・ナークプラシット他
公開:2005年 製作国:タイ

三眼ノ村(壱) 黒魔術の章 - ナパックパパ―・ナークプラシット, ローニン・チーム
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