人物一人ひとりが魅力的 ベイビー・ブローカー

ベイビー・ブローカー Broker ☆ 【Blu-ray】

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 是枝裕和監督による2022年の韓国映画。ソン・ガンホ、カン・ドンウォン、ペ・ドゥナら韓国の人気俳優が出演し、第75回カンヌ国際映画祭では最優秀男優賞(ソン・ガンホ)とエキュメニカル審査員賞を受賞した。

 サンヒョン(ソン・ガンホ)は、パートナーのドンス(カン・ドンウォン)とともに教会のベイビー・ボックスに預けられた赤ん坊を横取りし、新しい親に斡旋するブローカーである。若い女性ソヨン(イ・ウジン)が置き去りにした赤ん坊を売ろうとしていたサンヒョンたちは、思い直して教会に戻ったソヨンに問い詰められ、斡旋の謝礼を山分けすることを条件に彼女を伴い買い手の待つ盈徳へと車で向かう。一方、ブローカーの摘発を狙う刑事のスジン(ペ・ドゥナ)は、犯行現場を押さえようと後輩刑事のヘジン(イム・スンス)と2人でサンヒョンたちを追いかける。

 赤ん坊の売買というテーマを扱っていながら、ソン・ガンホやカン・ドンウォンらが演じる登場人物のキャラクターと演出の妙で重苦しさを全く感じさせない。会話中心に展開する物語は、一人ひとりのキャラクターが際立ち、登場人物の誰もが魅力的に映る。主役級は言うに及ばず、ペ・ドゥナの後輩刑事を演じたイ・ジュヨンや子役のイム・スンスなどの脇役も、彼らがいなければ作品が成り立たないと思わせる存在感があった。刑事に追われながら赤ん坊の引き取り手を探して旅をするだけでなく、殺人事件や一行を追うヤクザたちとのやりとりも加わり、見る者を引き付けて離さないロードムービーの王道といえる。不謹慎にも思えるかもしれないが、これまでの是枝作品同様、社会問題を扱っていながら文句なく「面白い」のだ。それでいて、望まない妊娠やひとり親、性的搾取や児童虐待など、なかなか解決されない多くの問題が物語の背景にあり、それらを身近な問題として考えさせる力を持った優れた作品だと思う。 

作品データ
監督:是枝裕和 出演:ソン・ガンホ、カン・ドンウォン、ペ・ドゥナ他
公開:2022年 製作国:韓国

ベイビー・ブローカー Blu-rayスタンダード・エディション - 是枝裕和, ソン・ガンホ
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