ユーモアとバイオレンス 犯罪都市

犯罪都市 The Outlaws ☆ 【Blu-ray】


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 韓国ソウルで実際に起きた地元暴力団とチャイニーズ・マフィアとの抗争を描いた韓国のクライム・サスペンス。ハリウッドでも存在感を発揮しているマ・ドンソクが屈強な刑事を熱演している。

 強力班の刑事ソクト(マ・ドンソク)は、毒蛇組とイス組の対立から起きた刺傷事件の犯人を捕らえるとともに、それぞれの組長の間で手打ちを行い、地区内における暴力組織の勢力バランスを保っていた。そんな中、中国から新興勢力の黒竜組のチャン(ユ・ゲサン)がソウルに乗り込んでくる。強引に毒蛇組を乗っ取り、勢力拡大を図る黒竜組と、縄張りを荒らされたイス組は一触即発の事態になり、強力班は組織の一掃作戦に乗り出す。 

 韓国映画は、日本映画では決して出せない「情念」を感じさせる作品が多く、特にクライム・サスペンスにおいてはハリウッドも凌ぐ迫力を生み出している。さらにこの作品は、ドラマのスピード感、ユーモアとバイオレンスのバランスが絶妙で、カン・ユンソン監督の脚本と演出、マ・ドンソクを始めとするキャストの演技力には脱帽するしかない。また、女っ気がないところも、韓国のバイオレンス映画の特徴といえる。ハリウッドや日本映画では観客動員に結びつけるためのヒロインが不可欠で、結果的にハードボイルドに徹しきれないのだが、韓国映画は脱線することなく物語に没入できる。  

 韓国映画の「情念」は、北朝鮮との分断や大陸の端で中国や日本に翻弄されてきた歴史が生み出したものなのだろうか。隣国で民族的にも近いといっても、全く別の歴史を歩んできたと考えると、元徴用工問題などの歴史認識についても絶対に譲らないという、多くの韓国の人々の感情も理解できるような気がしてくる。優劣とか良し悪しの問題ではなく、確かに集団や組織として付き合うときの難しい点ではあるが、映画に関しては決して日本映画が表現することのできない魅力につながっていると感じる。

作品データ
監督:カン・ユンソン 出演:マ・ドンソク、ユン・ゲサン他
公開:2017年 製作国:韓国

犯罪都市 [Blu-ray] - マ・ドンソク, ユン・ゲサン, チョ・ジェユン, チェ・グィファ, チン・ソンギュ, カン・ユンソン
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