タランティーノにはなれなかった ブレット・トレイン

ブレット・トレイン BULLET TRAIN 【TOHOシネマズ仙台】

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 伊坂幸太郎の「殺し屋シリーズ」の第2作『マリア・ビートル』を映画化した、2022年のアメリカのアクション映画。原作では東北新幹線が舞台だが、映画では東海道新幹線に変更されている。新型コロナウイルス感染症の影響で日本でのロケは行われず、アメリカで撮影が行われた。

 殺し屋の木村(アンドリュー・小路)は、幼い息子をビルの屋上から突き落とした犯人を追って京都行きの東海道新幹線に乗車するが、逆に犯人のプリンス(ジョーイ・キング)に捕まり、自由を奪われてしまう。同じ新幹線には犯罪組織の大物ホワイト・デス(マイケル・シャノン)の誘拐された息子(ローガン・ラーマン)と、彼の身代金を取り返した2人組の殺し屋のみかん(アーロン・テイラー=ジョンソン)とレモン(ブライアン・タイリー・ヘンリー)が乗っている。引退を考えているツキのない殺し屋のレディバグ(ブラッド・ピット)もまた、同じ新幹線から乗客のトランクを回収するよう仲介屋のマリア(サンドラ・ブロック)に依頼されるが、プリンスもそのトランクを狙っていた。

 いわゆるグラインドハウスやタランティーノ作品の路線を狙ったのだと思うが、豪華キャストや派手なセット、アクションの割に弾けきれなかった気がする。もしかすると日本が舞台でなければ脳天気に楽しめたのかもしれないが、日本人が見るには、違和感を超えるバカバカしさが足りなかったのではないだろうか。映画館で見たのでそれなりに迫力もあったのに、見終わったあともいまひとつ消化不良。もっとも、登場人物が多すぎて、頭の中で相関関係をまとめきれなかったことが大きかったのかもしれない。時間が経つにつれてじわじわと面白くなってきたので、タランティーノ作品の域には達しないとはいえ、そこそこ面白い作品だったといえる。ドタバタ喜劇を中心に据えたためにブラピが中心人物になったのだろうが、後半の真田広之の活躍を考えると、原作どおり木村を主人公にしてサスペンス要素を強めてもよかったのではないか。もちろん、その場合は主役もアンドリュー・小路ではないのだろうが。

 伊坂幸太郎の原作は映画を見たあとに読んだが、混沌とした状況と複雑な人間関係が巧みに描かれ、映画のドタバタ以上に楽しむことができた。映画の制作側も走行中の新幹線というシチュエーションだけで原作を選んだわけではないだろうが、原作のストーリーや人物描写の細かさは2時間程度の映画で描ききれるものではない。ここはひとつ、映画と小説の両方で楽しむことができたと考えて納得しておこう。

作品データ
監督:デヴィッド・リーチ 出演:ブラッド・ピット、ジョーイ・キング、アーロン・テイラー=ジョンソン他
公開:2022年 製作国:アメリカ、日本、スペイン

ブレット・トレイン オリジナル・サウンドトラック - オリジナル・サウンドトラック
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