SF仕立てのミステリ レミニセンス

レミニセンス　REMINISCENCE　☆　【ＵＨＤ】



　ヒュー・ジャックマンとレベッカ・ファーガソンの主演による2021年のアメリカのＳＦ映画。監督は本作が長編デビューとなるリサ・ジョイで、クリストファー・ノーランの実弟であり、彼女の夫でもあるジョナサン・ノーランが製作に名を連ね、ポール・キャメロンが撮影監督を務めている。

　近未来のマイアミは、海面上昇によって街の大部分が水没し、貴重な土地を所有する者が力を持っていた。記憶を追体験させる「記憶潜入（レミニセンス）」の案内役を職業とする退役軍人のニック・バニスター（ヒュー・ジャックマン）は、事務所を訪れた謎めいた女性メイ（レベッカ・ファーガソン）と恋に落ちる。２人は幸せな日々を過ごしていたが、彼女はある日突然姿を消してしまう。失意のままに検察からの依頼で犯罪組織の男の記憶に潜入したニックは、男の記憶の中にメイの姿を発見する。関係者の記憶潜入を行いメイの足跡を追ったニックは、彼女の正体と背後にある陰謀へと近づいていく。

　作品の宣伝文句を読んでクリストファー・ノーラン的な我慢強さと読解力を必要とする作品かと思ったが、思ったよりは単純なストーリー。しかし、弟のジョナサン・ノーランが製作に加わっているだけあって何となく奥深い雰囲気を醸し出している。ヒュー・ジャックマンの作品にありがちな光量の不足と、彼やタンディ・ニュートンの50代のシブい演技にグイグイ引き込まれるが、全体としてはスピード感や迫力に欠けた印象。「記憶潜入」というアイディアにこだわりすぎたのかもしれない。

　物語を追っていて引っかかったのは、本人の記憶であるにも関わらず、本人の視点だけではなく、第三者の視点で記憶が映像化されること。この点についてはニックがメイの疑問に答える形で説明しているが、本人の視覚に入らないものまで記憶しているという点は不自然。おそらく多くの人がモヤモヤを抱えながら見ているはず。それならばいっそ「記憶潜入」というＳＦ的な設定を排除し、本格ミステリとして展開した方がより緊迫感も増して面白かったような気もする。しかし、記憶に潜入するという設定があるからこそエルサがウォルターの愛人で、２人の間に子供ができたことも分かるわけで、仮に主人公の職業を心理カウンセラーや興信所に置き替えても、このような展開に持っていくのは難しいかもしれない。

作品データ
監督：リサ・ジョイ　出演：ヒュー・ジャックマン、レベッカ・ファーガソン他
製作年：2021年　製作国：アメリカ


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