ロマンスドール 【Amazon Prime Video】
「百万円と苦虫女」や「ふがいない僕は空を見た」の監督を務めたタナダユキが、自身の小説『ロマンスドール』を全編16mmフィルムで映画化した2020年のラブストーリー。出演者であるピエール瀧の逮捕の余波で公開が延期されため、高橋一生と蒼井優という人気俳優の共演作としては、それほど話題にならなかったような気がする。
美大を卒業し、フリーターをしていた哲雄(高橋一生)は、先輩の紹介でラブドールを製作している町工場で働くことになる。造形師の相川(きたろう)の下で働くうちにラブドールの奥深さを知り、次第に仕事にのめり込むようになった哲雄は、モデルとして工場を訪れた園子(蒼井優)に一目惚れしてしまう。哲雄は、医療用器具の製作をしていると偽ったまま園子と交際を深め、ついに2人は結婚する。仲睦まじく暮らす2人だったが、やがて哲雄が仕事に打ち込むあまり夫婦関係は不安定になり、そのような状況で園子は哲雄に対してある秘密を抱えることになる。
言うまでもなくラブドールという題材に惹かれて鑑賞したのだが、安定感のある出演者の演技に引き込まれ、自然にドラマの中に入り込むことができた。ラブドールを介してはいるものの、町工場の職人のドラマであり、若い男女のラブストーリーなのだ。売れすぎて食傷気味の高橋一生も抑制が効いた演技で嫌味がなく、相手役の蒼井優も自然な演技で「園子」そのもの。さらに、きたろうや渡辺えり、ピエール瀧ががっちり脇を固めているので、つまらない作品になりようがない。ストーリー的にベタな展開ではあるものの、分かっていても涙せずにはいられない。「愛し合うって、こういうことだよなあ」と共感できる部分も多かった。後半の哲雄の行動や周囲の反応には賛否がありそうだが、個人的には納得できる終わり方だと思う。
日本のラブドールの製造技術はかなりのもので、たまにネット上の画像を目にすることがあるが、化粧を施し、衣装を着けたラブドールは生身の人間に負けないくらい魅力的。しかし、現実的には数十万円を払って手に入れても置き場所に困るし、メンテナンスも大変そう。結局、一部の経済的に余裕のある好事家が購入しているのだろう。この「不気味の谷」ぎりぎりの存在が人間の願望を実在化したものだとすれば、一般受けするかどうかはともかく、それをテーマにした小説や映画は十分に成立する。下手をすればアダルト向け作品やファンタジー作品になってしまいそうな題材だが、キャストに演技巧者を揃えて、地に足の着いたラブストーリーに仕上げている。題材や公開のタイミングで損をした感があるものの、もっと評価されていい作品だと思う。
作品データ
監督:タナダユキ 出演:高橋一生、蒼井優、きたろう他
製作年:2020年 製作国:日本
ロマンスドール - 高橋一生, 蒼井優, 浜野謙太, 三浦透子, 大倉孝ニ, ピエール瀧, 渡辺えり, きたろう, タナダユキ, タナダユキ
次はこれ買う!
【Amazon.co.jp限定】スタ☆レビ2020配信始めました〔Blu-ray〕(A4サイズトートバッグ付) - スターダスト☆レビュー
この記事へのトラックバック
この記事へのコメント