意外に軟着陸 毒戦 BELIVER

毒戦 BELIVER ☆ 【BD】

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 麻薬密売組織を追い詰める中国公安警察を題材にした2018年の香港・中国映画「毒戦 ドラッグ・ウォー」の韓国版リメイク作品。2018年に韓国で公開されてヒットし、オリジナル版も再評価されることになった。

 麻薬取締局のウォンホ刑事(チョ・ジヌン)は、長年にわたって巨大麻薬組織のボスであり、正体不明の「イ先生」を追っていたが、有力な手がかりをつかめずにいた。ある日、組織の麻薬工場で爆発事故が起き、唯一の生存者が発見される。ウォンホは、組織から見捨てられた青年ラク(リュ・ジュンヨル)を利用し、組織への潜入捜査を開始する。

 情け無用の韓国映画がジョニー・トーのノワール作品をどのように消化するのか興味津々で鑑賞した。このリメイク版は、イ・ヘヨン監督自ら述べているように原作をリスペクトしながらも、大胆に翻案していて味わいは大きく異なる。オリジナルでは、スン・ホンレイ演じる中国公安警察の捜査官が不気味で印象的だったが、リメイク版で麻薬取締官を演じたチョ・ジヌンにその不気味さはない。舞台を韓国に移したことでオリジナルにあったシチュエーションの異様さが失われてしまったのだ。その一方で、組織の連絡係を務めるラクを演じたリュ・ジュンヨルは常に無表情で不気味。オリジナルのルイス・クーとは対照的にリメイク版の物語を引っ張る役割を果たした。

 後半は韓国映画ならではの情け容赦ない展開になるのかと期待したが、予想に反して組織と麻薬取締局の対決は痛み分けで、麻薬取締局側の被害は少なかった。オリジナルほどの悲惨さはなく、韓国映画にしては珍しく穏やかな(?)ラストを迎える。リメイク版はジョニー・トーのノワール感よりも、ストーリーで見せる方向を選んだようだ。とはいえ、リメイク版にはオリジナルとは違った面白さがあることは確かで、オリジナルを知らなくても十二分に楽しめる作品であり、ハリウッドのリメイクでは作れないアジアの温度感を描いていた。

 ネタバレになるので詳しく触れることはしないが、展開はオリジナルの「毒戦ドラッグ・ウォー」よりもチョウ・ユンファ&アーロン・クォックの「プロジェクト・グーテンベルク」により近い印象を受けた。もっとも、「プロジェクト・グーテンベルク」が「毒戦ドラッグ・ウォー」の影響下にあるのだろうが。

作品データ
監督:イ・ヘヨン 出演:チョ・ジヌン、リュ・ジュンヨル他
製作年:2018年 製作国:韓国

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