
前作から始まった満男(吉岡秀隆)と泉(後藤久美子)の恋物語が新たな展開を迎える「男はつらいよ」シリーズの第43作。「男はつらいよ50 お帰り寅さん」でもこの作品から多くの印象的な場面が引用されている。
満男(吉岡秀隆)は大学生になり、柴又の実家を出て独り暮らしを始めようとしていた。そんなとき、泉(後藤久美子)が母親礼子(夏木マリ)と別れた父親と会うため名古屋から上京してくる。満男は泉に付き添って父親の勤務先を訪ねるが、既に父親は退職して浮気相手の故郷の大分県日田市で暮らしていることを知る。名古屋へ戻る泉を見送ろうと東京駅に来た満男は、日田へ行こうとする泉を放っておくことができず一緒に新幹線に乗り込んでしまう。
BSプレミアムで始まった「贋作男はつらいよ」を挟みつつ、前作に引き続いて4Kデジタル修復版で鑑賞。劇中、タコ社長が寅さんに向かって「四十も過ぎて独身で」と言うのを聞き、自分が既にこの作品の寅さんの年齢を超えていることに驚いた。寅さんは父親と母親の復縁を願い悩む泉や、夫の裏切りに傷つく礼子の相談相手になる。学歴も教養もない寅さんだが、じっくりと相手の言葉に耳を傾け、相手の思いに寄り添う姿勢はまさに「傾聴」。寅さんの年齢を超えた自分にあのような態度が取れるのか反省してしまった。
後藤久美子の可憐さ、美しさは言うまでもなく、当時30代後半の夏木マリもきれいだった。前作では寅さんの恋は描かれなかったが、この作品では別れた夫のことを忘れられない礼子に思いを寄せる寅さんが何とも切ない。寅さんと礼子が結ばれることはないと分かっていても、礼子が寅さんに信頼を寄せていることが分かり、満男と泉の関係の深まりも予感させるので悲しいばかりの終わり方ではなかった。また、シリーズ後半からお馴染みの、満男がさくらや博と衝突する場面は、かつては子どもで、現在は親になった立場で見ると共感する一方で苦々しくもある。このように普遍的な家族のあり方を切り取っている点も、愛されるシリーズになった一因だろう。
作品データ
監督:山田洋次 出演:渥美清、倍賞千恵子、吉岡秀隆、後藤久美子他
製作年:1990年 製作国:日本
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