満男への禅譲 ぼくの伯父さん

はつらいよ ぼくの伯父さん ☆ 【BD】

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 「男はつらいよ」の42作目で、満男(吉岡秀隆)のマドンナとなる泉(後藤久美子)が初登場し、シリーズ後半に向けて若い2人のドラマが中心になっていくきっかけとなった作品。4Kデジタル修復版のブルーレイを購入した。

 浪人中の満男(吉岡秀隆)は、父・博(前田吟)と親子げんかの果てにバイクで家を飛び出す。満男が向かったのは葛飾高校の吹奏楽部の後輩で、名古屋に転校した及川泉(後藤久美子)のところだった。満男は、両親の離婚により母親と名古屋に転居した泉が寂しい思いをしていることを知り、居ても立ってもいられなくなったのだ。ところが、ようやく捜し当てた泉の母親(夏木マリ)から、泉は佐賀県に住む叔母・寿子(檀ふみ)のもとに身を寄せているということを聞く。

 「お帰り寅さん」を見て一部の映像の記憶は甦ったが、ストーリーの細部はやはり忘れていた。満男が泉を追って佐賀へ行き、そこで寅さんに助けられることになるのだが、今回は寅さんにとってのマドンナは実質的に不在。公式には泉の叔母・寿子を演じた檀ふみがマドンナなのだが、彼女には尾藤イサオ演じる高校教師の夫がおり、(夫の性格には呆れつつも)別れるような不幸な要素はない。これまで夫のいる女性を好きになったことがないわけではないが、寅さんは不倫など人の道に外れるようなことはしない。そのために寅さんは寿子に惹かれながらも決してデレデレした態度は見せない。檀ふみの控え目な演技が非常に魅力的で、寅さんにもう少しいい目を見せてあげたかった気もするが、意外にも2人の関係は満男と泉の保護者という立場に留まってしまった。結果的に寅さんとマドンナのやりとりよりも、寅さんと満男、満男と泉のやりとりが中心に据えられた作品となっている。ひさびさに見直して改めて感じたのは、この時点で既に寅さんから満男へのバトンタッチの構想が山田洋次監督の頭の中にあったということ。渥美清の突然の死でシリーズは中断されてしまったが、老いた寅さんにいつまでも恋をさせるのも不自然であり、監督には寅さんを後見役にして満男のドラマを展開させる構想があったに違いない。もっとも、これは満男世代に近かった当時の私も願望でもあるのだが。

 「男はつらいよ50 お帰り寅さん」を見た勢いでアマゾンから「男はつらいよ」の42~45作目をまとめ買いしたので、この年末年始に他の作品と行ったり来たりしながら、満男と泉の恋物語をじっくり振り返ることにした。実際に会ってもいるのだが、この当時の後藤久美子の美しさは別格。デレデレしながら見て妻に呆れられてしまいそうだが。

作品データ
監督:山田洋次 出演:渥美清、倍賞千恵子、吉岡秀隆、後藤久美子他
製作年1989年 製作国:日本

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