日本ではいまひとつ話題にならなかったようだが、国内外で記録的な興行収入となったインドのドラマ映画。2010年代に入って「きっと、うまくいく」や「PK」、「ダンガル きっと、つよくなる」など、世界的にヒットした感動作を送り出しているボリウッドだが、それらに肩を並べる作品である。
パキスタンの山村に暮らす少女シャヒーダー(ハルシャーリー・マルホートラ)は、生まれつき言葉を話すことができない。言葉を話せるよう祈願するために母親は彼女を連れて隣国インドのデリーにある聖廟を訪れるが、帰りの列車でシャヒーダーがはぐれ、母娘は離れ離れになってしまう。一人インドに取り残されたシャヒーダーは、後続の貨物列車に乗り込んでクルクシェートラの町にたどり着き、デリーから来ていた青年パワン(サルマン・カーン)に出会う。パワンはシャヒーダーを警察に連れて行くが、警察は身元が分かるまでパワンに彼女の面倒を見るように告げる。パワンは、下宿先の娘で、パワンの婚約者でもあるラスィカー(カリーナ・カプール)らとともにシャヒーダーの母親を探そうと尽力するが、あることがきっかけで彼女がパキスタン人であることが分かる。
パキスタンとの対立や多民族国家であること、異なる宗教が入り混じっていることなど、容易には解決しがたい問題を孕んだインドの風土や文化が、このストーリーを成立させている。料理の仕方によっては重苦しいドラマになるところを、登場人物たちのキャラクター設定や時折挿入される歌とダンスによって見事にエンターテイメントに仕上げている。さすがは映画大国のインドである。手を替え品を替え、パワンとムンニー(シャヒーダー)の2人の前に立ちはだかる障害も、非常に効果的に配置されていて、まるでステージをクリアするごとにポイントが増えていくゲームをしているような快感がある。次々に現れる脇役たちも魅力的で、結末も当然ハッピーエンドだが、印パのどちらかが勝者ということでもなく、「必ず最後に愛は勝つ」としたところも見事だった。
主役のパワンを演じたサルマン・カーンは、このブログでも紹介した「ダバング 大胆不敵」や「タイガー 伝説のスパイ」などアクション作品の印象が強いが、さすがに三大カーンの1人と言われる名優である。敬虔なヒンドゥー教徒で真っ正直な一方、勉強やスポーツが苦手で父親からも愛想を尽かされるキャラクターは、「PK」のアーミル・カーンと重なるところがあるものの、強さやカッコよさを抑えて純朴な青年を好演。すぐに彼の演じたパワンの魅力にはまってしまう。しかし、その彼を引き立てたのは、誰あろう言葉が話せない少女シャヒーダーを演じたハルシャーリー・マルホートラなのだ。動物と子役には勝てないと言われているが、彼女は演技も抜群。美少女であることはもちろん、大きな瞳が印象的で、台詞がなくても瞳の演技で全てを語っている。台詞抜きで、あれほど豊かに喜怒哀楽を表現できれば、言語が異なる外国人でも感動するのは当然。しかも、わずか7歳であの演技をやってのけたのだ。
例によって2時間半を超えるインド映画なので、誰彼構わず薦める作品でもないが、誰が見ても絶対に感動すること請け合い。6月を終えた時点で、個人的な今年のベスト1作品が決まったと言っていい。
監督:カビール・カーン 出演:サルマン・カーン、ハルシャーリー・マルホートラ他
製作年:2015年 製作国:インド
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