ラジニカーントの「ロボット」を監督したシャンカールによる2015年のインド映画。インド映画とはいっても、多く日本で公開されている「ボリウッド」作品ではなく、チェンナイを中心とするタミル映画の「コリウッド」作品で、前者とは微妙に味わいが異なっている。
チェンナイに住む青年リンゲーサン(ヴィクラム)は、ボディビルダーの頂点であるミスター・インディアを目指していた。地元のボディビル大会で優勝した彼は、憧れの人気モデル、デイヤー(エイミー・ジャクソン)とCMで共演することになり、中国で苦労の末に撮影を終えたCMは大ヒット。たちまち人気モデルとなってデイヤーとも愛し合う仲となる。しかし、彼の成功を妬む者たちに陥れられたリンゲーサンは、毒物によって醜い姿となり、デイヤーとも離れ離れになってしまう。
インド映画では標準的な本編188分という3時間を超える長編ドラマ。正直言って主演のヴィクラムとエイミー・ジャクソンは(日本で知られている他のインド俳優に比べて)それほどの美男美女というわけではない。もちろん、場面場面で魅力的ではあるのだが、登場人物のキャラクターもあり、ボリウッド作品の主演俳優のような「どこから見てもスター」的な輝きには欠けている。しかし、さすがに3時間も見ていると、当初の違和感も徐々に薄れ、青年リンゲーサンやヒロインのデイヤーが魅力的に見えてくる。連続ドラマにすれば4話分に相当するのだから気がついたときにはどっぷりとその世界にはまっている。
CM業界を描いているだけあって、インド映画の大きな魅力の一つであるダンスシーンは、バラエティに富み、華やかさ満点。この作品の場合は物語の展開を歌と踊りで表現するというパターンではなく、CM撮影をとおしてリンゲーサンとデイヤーの関係が深まっていくことを描写するものになっている。アクション・シーンも中国が舞台になっていることもあり、ワイヤーアクションを盛り込むなどサービス精神も旺盛。ストーリーだけでなく、あらゆる要素を盛り込もうとするところはさすがにインド映画である。
ストーリーは勧善懲悪の復讐譚を予想させたが、最後は微妙なハッピーエンド。後味は悪くないが、けっこう残酷な復讐劇になっている。予定調和にならないところが面白かったし、インド映画の奥深さを感じさせられた。
作品データ
監督:シャンカール 出演:ヴィクラム、エイミー・ジャクソン他
製作年:2015年 製作国:インド
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