しばしば恋愛映画の佳作を送り出しているタイ映画界。残念なことに評判がよい作品でも日本版が発売されることは少なく、ネットなどの情報を頼りに現地からDVDを取り寄せ、英語字幕や中国語字幕、ときには全くわからない原語で見ることも多かった。今回は珍しく日本版が発売されていたので2012年の作品を遅ればせながら購入して鑑賞した。
チャニサ(ピットシニー・タンウィブーン)は、田舎からバンコクに出て来た地味な26歳のOL。初恋の相手である高校時代の同級生オームのことを忘れられずにいたが、アメリカ帰りの彼にバンコクで再会する。オームから交際を申し込まれ、有頂天になったチャニサだが、通勤のバスの中で、隣り合わせた高校生のベース(カヌンニット・チャクサミッターノン)と、偶然キスをしてしまう。チャニサが忘れた携帯を拾ったベースは、彼女に猛烈なアタックを開始するが、無礼な態度をとる年下のベースをチャニサは相手にしようとしない。
タイ映画独特の「ゆる~い雰囲気」があって、フジの月9のようなトレンディ(死語!)な恋愛ドラマを期待するとがっかりするかもしれない。しかし、タイ映画も見慣れてくると、この感覚が何ともいえず嬉しい。10年ほど前にバンコクの高校で2週間ほど過ごしたことがあるが、チャニサが女子高生になりすましてベースの高校に入り込むシーンや、ベースと同級生との関係も「あるある」と納得。チャニサの同僚が、高校生のベースと付き合っているチャニサに対してするアドバイスも現実的で、決してノリだけで展開する恋愛映画ではない。結末はお決まりのハッピーエンドになってしまったものの、後味は悪くない。
年下の高校生と恋に落ちるチャニサを演じたピットシニー・タンウィブーンは、浅野温子と中谷美紀を足して2で割り、さらに松田聖子を少し加えたような印象。美人なのだろうが、キャラクター的に少しパッとしないメイクなので20代の役にしては老けて見える。この作品でも、あえてセクシーな美人女優をキャスティングしなかったことでリアリティを感じさせる恋愛映画になったのではないだろうか。
それほどバンコクの街並みが出てきたわけではないが、タイ映画の「ゆる~い雰囲気」に浸っていると、早く5回目のタイ訪問をしたくなってしまう。
作品データ
監督:キーラティ・ナークインタノン 出演:カヌンニット・チャクサミッターノン、ピットシニー・タンウィブーン他
製作年:2012年 製作国:タイ
次はこれ買う!
この記事へのコメント