アメリカの作家テッド・チャンの小説「あなたの物語」を原作に、「ブレードランナー2049」のドゥニ・ヴィルヌーヴが監督を務めたSF映画。時と記憶と言語をテーマにしたスケールの大きい作品だが、主要な登場人物はほぼ3人という舞台劇を見るような作品である。
突如、世界各地に12隻の巨大な宇宙船が出現し、米軍のウェバー大佐(フォレスト・ウィテカー)から依頼を受けた言語学者のルイーズ(エイミー・アダムス)は、物理学者のイアン(ジェレミー・レナー)とともに「殻」と呼ばれた宇宙船の内部に入り、2体の異星人とのコミュニケーションを試みる。宇宙船内部への侵入が可能となる18時間おきに調査を進め、ヘプタポッドと名づけられた異星人が空中に描く文字の解読に成功する。ルイーズたちは彼らが地球に飛来した目的をつかみかけるが、中国軍は宇宙船を人類への脅威だとして戦闘態勢に入る。
「第三種接近遭遇」以降を描いた女性を主人公とする映画としてはジョディ・フォスターの「コンタクト」(1997年)を思い出すが、ハデな戦闘シーンやSFXなどがなく、緊張感のある展開という点で似た雰囲気がある。エイミー・アダムスが演じた言語学者役も、20年前ならジョディ・フォスターが演じていたかもしれない。前評判の割にはそれほど話題にもならず、SF映画にしては非常に地味。しかも、ストーリーを動かすのはエイミー・アダムス、ジェレミー・レナー、フォレスト・ウィテカーの3人だけといっていい。疲れているときに見たら寝てしまったかもしれないが、淡々とした展開ながらもジワジワと作品世界に引きずり込まれてしまった。ルイーズに時折フラッシュバックする亡くした娘の記憶も、説明不十分なまま終わるのかと思いきや、ちゃんと最後で納得できるようになっている。原作は読んでいないが、難解なテーマをうまくまとめて映像化したのだと思う。
SFXを多用したハリウッドのSF映画の大作ももちろん好きだが、こういうジワジワと迫ってくる作品も悪くない。せっかちにならず、じっくり見ているとテーマの深遠さにあれこれ考えさせられる佳作である。批判的な評価も少なくないようだが、個人的にはあえて高く評価したい。
作品データ
監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ 出演:エイミー・アダムス、ジェレミー・レナー、フォレスト・ウィテカー他
製作年:2016年 製作国:アメリカ
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