「きっとうまくいく」のアーミル・カーンとラージクマール・ヒラニ監督が再びタッグを組んだ2014年のインド映画。もちろん、インド映画に欠かせない歌や踊りも入っているが、本編153分と短め(?)の作品。インド映画としては同じくアーミル・カーン主演の2015年に見た「チェイス!」以来の鑑賞となる。
留学先のベルギーでパキスタン青年との悲しい別れを経験したジャグ-(アヌシュカ・シャルマ)は、帰国してデリーのTV局に勤めていた。ある日、街で「神様は行方不明」という奇妙なチラシを配る青年PK(アーミル・カーン)に出会い、彼を取材対象として追い始める。PKから、自分は宇宙人で、盗まれた宇宙船のリモコンを取り戻すためにデリーにいるという秘密を打ち明けられたジャグーは、正気を疑いながらも彼の純粋さに惹かれていく。そして、彼の「宗教」や「信仰」に対する素朴な疑問はジャグーをはじめ、人々の心を動かし始める。
このところハリウッド映画などの安全牌ばかりを鑑賞して、開拓精神を忘れかけていたが、Amazonのオススメで発見してひさびさにインド映画を購入した。153分というインド映画としては短編映画ともいえる短さに後押しされて早速見てみると、評判通りの傑作だった。
インドでは映画が最大の娯楽となっているだけに、構造的にも演劇やミュージカル、日本でいう寄席芸能などのあらゆるジャンルが包含されて、本編が3時間を超えることも当たり前。さらにテーマ的にも恋愛や友情、生老病死など、雑多なテーマがバランスよく配置され、他国の「映画」と異なる独特の文化となっている。単純明快な面白さや感動を求める人には受け入れ難いところでもあるのだろうが、そこにハマってしまうとインド映画からはそう簡単に抜け出せなくなってしまう。ほぼ2年ぶりにインド映画の新作を見て、その思いを改めて強くした(作品そのものは3年前のものだが)。
ヒンドゥー教、イスラム教、キリスト教、シク教など様々な宗教が入り乱れる宗教大国インドで、「宗教」や「信仰」をテーマに映画を作るということにも驚いたが、いまなおIS(イスラミックステート)のテロに脅かされている現代にとっては、非常に重要なメッセージを伝える映画になっている。PKの疑問は、「宗教」や「信仰」に対して柔軟な日本人にとって特に共感できるものなのではないだろうか。私自身、学生時代に数多くの(怪しげな)新興宗教の勧誘を受けて勢いでいろいろ調べたり、卒業論文の関係で仏教を学んだりした経験があり、「信仰」や「宗教」に関しては一般の人より知識や理解はある方だと思うのだが、そのときから感じていた疑問の答えにこの作品でめぐり逢ったような気がする。もっとも、この作品はテーマに「宗教」や「信仰」を含んではいるが、笑い、泣き、感動できる純然たるエンターテイメント。もちろん、「きっとうまくいく」で多くの人に感動を与えた、インドが誇る名優アーミル・カーンの魅力も十分に堪能できる。ヒロインを演じたアヌシュカ・シャルマも、インドの現代女性を等身大に演じていて(いつものロングヘアーでボリューム感たっぷりのインド女優の魅力とは違って)、またこれもよかった。
製作年は2014年だが、今年観賞した中では最も印象深い作品になりそうな気がする。いったい、3年間も私は何をしていたのだろう。
作品データ
監督:ラージクマール・ヒラニ 出演:アーミル・カーン、アヌシュカ・シャルマ他
製作年:2014年 製作国:インド
次はこれ買う!
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