私にとっては学生時代から「キネマ旬報」が映画鑑賞における教科書のようなものだったが、最近の嗜好は徐々に「映画秘宝」に近づいてきている。洋泉社MOOKから出ている「別冊映画秘宝」を買うことも多く、今回購入したのは2016年公開の作品100本を紹介した1冊。
全部で5つの章からなり、「見なきゃ損する20本」、「抗う者たちの20本」、「本当に『怖い』20本」、「家でも見たい20本」、「劇場で見たい20本」の計100本が紹介されている。さすがに「映画秘宝」のライター陣が勧めるだけあって、ビデオスルーの作品や表舞台で取り上げられることのない低予算の邦画など、「へ~、こういう作品もあるんだ」と意外な発見がある。100本全てが自分にとって見るべき価値があるとは思わないが、Amazon のおすすめでスルーした作品などは改めて買ってみたい気持ちになる。キネ旬ベスト10でも自分が見た作品が多く入っていると嬉しいものだが、取り上げられた100本のうちで見たことがある作品は11本。鑑賞率11%はまだまだ努力不足かもしれない。
30名を超える執筆者が自分なりのこだわりを持って今年のオススメ映画を紹介しているが、文章レベルは玉石混交。全てが「読めば見たくなる」ガイドになっているかといえば残念ながらそうではない。映画ファンが映画の雑誌や書籍を読むのは、映画を見る前でも見たあとでも、読むことで作品に対する期待や感動を抱くことが(思い出すことが)できるからなのだ。その点では自分の知識を披瀝するだけだったり、思いが伝え切れていなかったりする紹介も少なくない。読者が限定されているとはいえ、ブログで映画を紹介している自分自身を振り返る意味でも、示唆に富む1冊だった。
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