雰囲気たっぷり　マーシュランド: 案山子庵（かかしあん）　KAKASHI-AN

雰囲気たっぷり　マーシュランド

2016年12月28日

マーシュランド　La isla minima 【iTunes】

　スペインのアカデミー賞にあたる2014年のゴヤ賞で作品賞、監督賞、主演男優賞など10部門を受賞するなどしたスペインのミステリ映画。

　1980年、アンダルシアの田舎町で２人の少女が行方不明になり、強姦されたのちに殺害される事件が起きる。マドリードから左遷された刑事ペドロ（ラウール・アレバロ）と、自分の過去を語ろうとしないベテラン刑事ファン（ハビエル・グティエレス）の２人は、以前にも同様の失踪事件が起きており、キニ（ヘスス・カストロ）というプレイボーイ青年が少女たちの失踪に関係していたことを突き止める。

　ハリウッド映画のような押しつけがましさがなく、いかにもスペインといった雰囲気にあふれる作品。小説にも同じことがいえるが、ヨーロッパのミステリの魅力は人物造型にあるといってもいいのではないか。もちろん、アメリカのミステリ小説やハリウッド映画の登場人物も魅力的である。しかし、どちらかというと人物がわかりやすく描かれる傾向があるような気がする。

　この作品の主役であるペドロとファンの２人の刑事も、単純なキャラクターではなく、最後まで謎の部分が残る。特にファン刑事はフランコ政権時代にデモ参加者を射殺した過去を持ち、少女の強姦殺人にも関わっている疑惑が物語後半で浮上する。一癖もふた癖もある刑事２人が、同じく一癖もふた癖もある町の人々の間に入って事件を追う。最後まで見ても真犯人がよくわからなかったのだが、作品全体の雰囲気は悪くない。見る側が、自分なりに事件を解釈できれば評価が上がる作品だろう。

作品データ
監督：アルベルト・ロドリゲス　出演：ラウール・アレバロ、ハビエル・グティエレス他
製作年：2014年　製作国：スペイン