チョウ・ユンファとシルビア・チャンの主演で名作「過ぎゆく時の中で」を監督したジョニー・トーが、再びこの2人とともに作ったミュージカル映画。シルヴィア・チャンは舞台でも同じ役を演じ、この映画では脚本と製作も務めている。
シアン(ワン・ジーイー)は総合商社ジョーンズ&サンに入社し、同じ新入社員のケイケイ(ラン・ユェティン)とともに副社長デイヴィッド(イーソン・チャン)の下で働くことになる。会社は会長ホー(チョウ・ユンファ)と社長チャン(シルヴィア・チャン)の強力なリーダーシップで事業拡大を続けていたが、デイヴィッドは会社の金を横領して私腹を肥やしていた。しかし、投資に失敗したデイヴィッドは経理担当のソフィ(タン・ウェイ)に近づき、彼女を利用して損失の穴埋めをしようとする。
チョウ・ユンファがミュージカル作品に出演すると聞いて1988年の「大丈夫日記」のようなコメディを想像していたが、意外にテーマは重く、社会派ドラマといっていい。日本のドラマでいうと、「半沢直樹」などの企業ドラマに近く、内容はドロドロしている。しゃれたセットと音楽を背景に、軽快に物語は進むのだが、ストーリーは最後まで救いがない。公務員の私から見ればピンとこないところも、民間企業に勤めている人が見れば身につまされるのではないだろうか。
「過ぎゆく時の中」で好きだったのでチョウ・ユンファとシルヴィア・チャンの共演に惹かれてDVDを購入したが、チョウ・ユンファは特別出演扱い。出番は多いものの、大きくストーリーに絡むわけではない。ワン・ジーイーとラン・ユェティンの視点で物語は進むのだが、実質的な主演は横領する副社長を演じたイーソン・チャンと経理担当のタン・ウェイの2人。この2人は歌手でもあるのでミュージカル映画には適役で、しかも存在感が半端ではない。その2人を物語の後半で退場させ、物語全体もサクセスストーリーにしなかった点は大いに評価したい。しかし、ミュージカル映画でこれだけ苦い展開というのは評価が分かれるだろうなあ。
作品データ
監督:ジョニー・トー 出演:イーソン・チャン、タン・ウェイ他
製作年:2015年 製作国:香港、中国
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