侯孝賢監督の8年ぶりの最新作であり、初めての武侠映画。第68回カンヌ国際映画祭で監督賞を受賞したほか、昨年度の第89回キネマ旬報ベスト・テンでは外国映画の5位にランクされている。日本からは妻夫木聡と忽那汐里が出演している。
朝廷の権威が衰え、藩鎮勢力が争う時代となった唐代の中国、聶隠娘(スー・チー)が13年ぶりに魏博に帰ってくる。聶隠娘は魏博の節度使である田季安(チャン・チェン)の婚約者であったが、政略結婚の犠牲となり、道士の嘉信(シュー・ファンイー)に引き取られて暗殺者としての修行を積んでいた。季安暗殺の密命を帯びた聶隠娘は、彼と妾の瑚姫がいる館に忍び込み、婚約の証であった玉玦を置いて行く。
侯孝賢、スー・チー、チャン・チェンといえば2005年の「百年恋歌」が思い出されるが、現代劇から武侠映画へとステージを移したことで余計にわかりにくくなった印象がある。侯孝賢は作家性の高い監督で、これまでも決してわかりやすい作品を撮ってきたわけではない。念願の武侠映画にも侯孝賢のこだわりが随所に見られ、アクションにリアリティを持たせるために殺陣は短く凝縮され、役者自身が登場人物になりきるようにリハーサルも行わなかったという。そのうえ、ほとんどの登場人物が寡黙なのだ。あまりにも説明的な台詞がリアリティを損ねるのはわかるが、人物関係や歴史的背景が単純ではないので1回や2回見ただけではストーリーがすんなり頭に入ってこない。淡々と物語が進むので疲れているときに見ると決まって意識を失ってしまい、合計4回も見ることになってしまった。しかし、4回見ても展開が腑に落ちることはなく、結局は雰囲気を味わうだけで終わってしまった。
スー・チーのたたずまいや映像の美しさは印象に残る作品であるが、これまで香港映画の荒唐無稽な武侠映画に親しんできた自分にとっては何とも敷居の高い作品となってしまった。そういえばパルムドールを獲得した「ブンミおじさんの森」でも何度も挑戦して討ち死にしてしまったので、私はカンヌ国際映画祭と相性が悪いのかもしれない。
作品データ
監督:侯孝賢 出演:スー・チー、チャン・チェン、チョウ・ユン他
製作年:2015年 製作国:台湾・中国・香港・フランス
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