全国紙の書評でも取り上げられ、高橋源一郎の帯にも背中を押されて購入。
同じ著者の『AVレビュー大全 1987-2012』は電子書籍で読んだことがあるが、このときはあまり面白いとは思わなかった。著者はAV専門のライターであらゆるAVを見ているので、自分のAV鑑賞歴がぴったり重なれば読んでいても楽しかったに違いない。残念ながら「なるほど」と共感する部分は少なく、「見てみたい」と思うAVもほとんどなかった。
ところが、今回の『痴女の誕生』は読み応え十分。筆者の筆力にも感心した。AVに限らず専門分野を持つライターは独りよがりの文章になりがちだが、客観的で抑制が利いており、押しつけがましい印象を受けない。高橋源一郎が「AVの歴史の教科書」と言うだけのことはある。
内容は五章からなり、それぞれ「美少女」「熟女」「素人」「痴女」「男の娘」というテーマで書かれており、アダルトメディアに登場する女性の変容と、その背後にある社会の変容について分析がなされ、社会学的な視点からの指摘は刺激的ですらある。もっとも、私自身がついていけたのは「美少女」「熟女」「素人」あたりまでであり、「男の娘」に至っては全くわからない。しかし、世の中はLGBTへも開かれ始めており、著者の指摘が正しければ「男の娘」の一つ先の時代がそこまで来ているのかもしれない。
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