映画ジャンルの一つとして確立している「潜水艦映画」に分類される作品だが、戦争映画ではない。第二次世界大戦中にUボートとともに沈められた金塊の引き上げに挑む男たちを描いたサスペンス映画である。
かつてイギリス海軍の潜水艦の乗組員だったロビンソン(ジュード・ロウ)は、働いていたサルベージ会社から突然解雇を通告される。仲間から金塊を積んだUボートが黒海に沈んでいるという情報を得たロビンソンは、スポンサーを得て、旧式潜水艦で金塊を引き揚げようと計画する。イギリスとロシアのベテラン潜水艦乗組員を集めて黒海に向かったロビンソンだが、国籍の違う乗組員たちはことあるごとに衝突し、トラブルが起きる。
潜水艦映画にはハズレがないといってもいい。脱出不可能の密室を舞台としていることで似通ったストーリーになる傾向はあるものの、設定そのものが有利なのだ。スリラー映画として面白くならないはずがない。さらにこの作品の場合は、現代を舞台に、イギリス人とロシア人の混成部隊が旧式潜水艦でUボートから金塊を引き揚げようとするアイディアが効いている。ストーリーも技術的なトラブルだけでなく、人間関係のトラブルが加わり、さらに最後にはどんでん返しも待ち構えている。「困難を乗り越えて一致協力し、最後には偉業を成し遂げる」単純な物語にはなっていないのだ。
主人公のロビンソンを演じるジュード・ロウは、これまでとは少しイメージ・チェンジ。ジャン・レノのように少しくたびれているものの、いざというときには強くて頼りになる中年男を演じている。彼以外はさまざまな映画で見たことのある渋いバイプレイヤーが出演。派手さはないものの、密度の濃いキャストで作品の説得力を支えてていた。
単純な「一発逆転」物語でも十分に楽しめたと思うが、あえて予定調和を避けた結末は評価したい。見応えのある作品だった。
作品データ
監督:ケヴィン・マクドナルド 出演:ジュード・ロウ、スクート・マクネイリー他
製作年:2014年 製作国:イギリス、ロシア
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