80年代に話題作を次々と世に送り出した高橋伴明監督の最新作。製作には妻であり、この作品にも出演した高橋恵子が名を連ねている。2015年のモントリオール世界映画祭出品作品でもある。
映画監督の時田(奥田瑛二)は、大学で映画について教えながら新作の脚本に取りかかっているが、なかなか撮影に入ることができない。大学職員の唯(不二子)と同棲し、自らの老いを感じながら彼女と交わる時田の前に、女子高生の律子(村上由規乃)が現れる。彼女に魅せられた時田は、彼女の姿を追ううちに現実とも虚構ともつかない世界をさまよい始める。
「男が打ち止めになった印に、先っぽから赤い玉が出るんだ」という時田の台詞がこの作品のテーマをずばり現している。谷崎潤一郎の「痴人の愛」や「鍵」のような淫靡な雰囲気を期待して鑑賞したが、思ったよりも淡々とした印象。「性愛」シーンもリアリティが感じられず、あまりピンとこなかった。我々が奥田瑛二に抱くギラギラとしたイメージをあえて裏切るのが高橋伴明監督の狙いだったのかもしれない。結果的に官能的なシーンよりも、「枯れる」ということを我が身に引き寄せて考えさせられた。
律子を演じた新人の村上由規乃は、独特の色っぽさはあるものの、女子高生としては無理があった。21歳と年齢的には問題ないし、実際にあのような女子高生はいるのだろうが、肉感的で生々しすぎるために時田と一緒に妄想の世界に入ることはできなった。むしろ、愛人役の不二子の方が魅力的に感じられる。以前、谷崎潤一郎の原作を井口昇が監督した「卍」で彼女を見たときにはあまり感心しなかったが、今回は非常によかった。
作品データ
監督:高橋伴明 出演:奥田瑛二、不二子、村上由規乃他
製作年:2015年 製作国:アメリカ
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