1841年にワシントンで誘拐され、南部で奴隷となった自由黒人ソロモン・ノーサップの体験記『Twelve Years a Slave』を原作にしたドラマ映画。第86回アカデミー賞作品賞を受賞している。
ニューヨーク州サラトガに住む自由黒人のソロモン・ノーサップ(キウェテル・イジョフォー)は、ヴァイオリン奏者として妻子と幸せに暮らしていた。サーカスの演奏者としてニューヨークに招かれたノーサップだったが、仲介者に騙されて奴隷として売られ、ルイジアナの農園で働かされることになる。自由黒人の身分を隠し、サラトガの妻子のもとに帰ることを願いながらも、奴隷として過酷な日々に堪えるノーサップだった。
見ていてつらくなる作品だった。結局、12年もの間、奴隷として堪え忍んだノーサップは妻子のもとに戻るのだが、それは決してハッピーエンドではない。ノーサップが救われても、多くの黒人たちの苦しみは続くのだ。アメリカの奴隷制度が廃止されても、いまだに世界中で奴隷同様の暮らしを強いられている人々は少なくないはず。そのことを考えると、いくら軽快なテンポで物語が綴られているとはいえ、気楽には見ていられない。必要な作品であることに異論はないが、好んで見たい作品ではなかった。
ベネディクト・カンバーバッチやマイケル・ファスベンダーが、決してイメージ的には得にはならない役を演じ、ブラッド・ピットがチョイ役ながらも得する役で出ている。ノーサップを演じたキウェテル・イジョフォーも好演だったが、この豪華なキャストが作品を引き締めている。
アメリカではドナルド・トランプがメキシコ国境に壁を築き、イスラム教徒の入国を禁止すると発言したり、日本でも韓国人や中国人に対して差別的な発言がなされたりと、いまだに差別問題は過去のことではない。自分の中に巣くう偏見から自由になりたいと切実に思わされる作品だった。
作品データ
監督:スティーヴ・マックイーン 出演:キウェテル・イジョフォー、マイケル・ファスベンダー他
製作年:2013年 製作国:アメリカ、イギリス
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