冷戦時代のアメリカを舞台にしたいっぷう変わったアメコミが原作のヒーロー映画。監督のザック・スナイダーは、「エンジェルウォーズ」や「マン・オブ・スティール」なども手がけ、リアリズムよりぶっ飛んだ映像表現を得意としており、2016年には「バットマンvsスーパーマン」の公開も控えている。
1930年代のアメリカ、マスクとコスチュームに身を包んだヒーローたちが犯罪者たちと戦っていた。第二次世界大戦後には彼らの後を継いだ第二世代のヒーローたち「ウオッチメン」が活躍していたが、1980年代になるとメンバーたちはそれぞれの生活を送っていた。ところが、メンバーの1人コメディアン(ジェフリー・ディーン・モーガン)が何者かに殺害される。「ウオッチメン」を抹殺する企てが進行していると考えたロールシャッハ(ジャッキー・アール・ヘイリー)は、かつての仲間たちナイトオウル(パトリック・ウィルソン)やオジマンディアス(マシュー・グッド)のもとを訪れ、警告するが、事態は思わぬ方向へ進んでいく。
日本人にとって、アメコミのヒーロー物といえば脳天気で明るいものというイメージがあるが、映画化された作品を見ているとけっこうダークな雰囲気のものが多いことに気づく。日本のマンガに比べてアメリカのコミックはドラマ性に欠けるという先入観がそう思わせているのかもしれない。しかし、アメコミのヒーローたちの苦悩は意外に深いようだ。
この作品も暗い雰囲気で物語が進んでいく。さらにキャストが地味で、本編が2時間半を超えるということも重苦しさに拍車をかけている。キャストの名前を見ても、よほどの映画ファンでなければ顔がすぐに思い浮かぶ俳優はいないはず。いずれも出演作は多いが、決して主役級で出ている俳優ではないのだ。しかし、逆にそれが「ウオッチメン」の独特の雰囲気を作り上げたといっていい。企画段階ではアーノルド・シュワルツェネッガーやロビン・ウィリアムズ、ケヴィン・コスナーたちの名前も挙がっていたようだが、そのうちの1人でも出演していたらこの作品の深い味わいは出なかったに違いない。どこに進むのかさっぱりわからない物語ではあったが、随所に実在した政治家や有名人が出てきて、その点も面白かった。
米ソの冷戦が終結しても、世界に平和が訪れることはなかった。もしかすると、対立軸がはっきりして、両者の力が均衡していた時代の方が平和だったのではないか、などとこの作品を見て考えさせられた。
作品データ
監督:ザック・スナイダー 出演:マリン・アッカーマン、ビリー・クラダップ他
製作年:2009年 製作国:アメリカ
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