正体不明のマッチョなヒーロー・クリッシュが活躍するインドのSFアクション映画。英題に「KRRISH 3」とあるように、実はシリーズ3作目らしい。日本版が発売されたのはこの作品だけだが、一応、冒頭で「前回までのあらすじ」が語られるが、大ざっぱすぎて人間関係などはよくわからない(もっとも、わからなくても全く問題はないのだが)。
クリシュナ(リティク・ローシャン)は、実はインドの人々の尊敬を集めるスーパーヒーロー・クリッシュなのだが、ふだんはバイトを首になってばかりで、TVキャスターである妻プリヤンカー(プリヤンカ・チョープラー)の尻に敷かれ気味。2人は天才科学者である父のローヒト(リティク・ローシャンの二役)と幸せに暮らしていたが、ムンバイに致死性のウイルスが流行する。ウイルスは超能力を持つ天才科学者カール(ウイヴェーク・オベロイ)と彼の作り出したミュータントたちがばらまいたものだった。
とにかく主演のリティク・ローシャンがカッコいいのだ。上半身のマッチョぶりがすばらしく、それでいて頭が悪そうでないところもいい。インド映画に不可欠のダンスシーンでもメチャクチャきれのいい踊りを見せている。この作品では二役を演じているが、言われなければ気づかないほど見事にキャラを演じ分けるなど、演技力もなかなか。いわゆる「インド人」らしくないので、作品次第では外国でも人気を集めるかもしれない。また、インド映画を見る楽しみの一つであるヒロインも、プリヤンカ・チョープラーとカングナ・カイウトのツートップ。それぞれに見せ場が用意され、十二分に満足できる。敵役を憎々しげに演じたウイヴェーク・オベロイが、「プリンス」ではヒーローを演じていたことを思うと、善悪の演じ分けも見所の一つとなっている。
ハリウッド映画を見るようにこの作品を見てしまうと「残念な作品」で終わってしまうかもしれないが、インド映画を何本か見たことのある人には、いかにも「インド映画」らしい作品として楽しめるはず。現在でもインドでは映画が娯楽の中心にあり、観客も映画を見に行くときは思い切り楽しもうと映画館にやってくる。そのためにインド映画は3時間近い作品も多いのだが、作品の長さだけではなく、ストーリーもまた凝っている。テーマも生老病死、喜怒哀楽と貪欲に盛り込むので、慣れないうちはちぐはぐな印象を受けたり、コメディ映画だと思って見ていると急にシリアスな展開になって戸惑ったりもする。しかし、それがインド映画の面白さなのだ。
この作品も最初はゆるいコメディ映画かと思っていたが、中盤以降は手に汗握る展開になり、後半は涙さえ浮かべて感動しながら見てしまった。「インド映画は後半が勝負」ということを忘れずに見ることが肝要である。
作品データ
監督:ラケシュ・ローシャン 出演:リティク・ローシャン、プリヤンカ・チョープラー他
製作年:2013年 製作国:インド
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