一部マニアの間で評価が高い、藤岡弘、主演のアメリカ映画。30年近く前の作品だが、以前から興味があったので、今月DVDが再発売されたのを機に購入した。
冷凍状態で発見された戦国時代のサムライが、ロサンゼルスの研究所で「解凍」されて蘇生する。一種のタイムスリップ物で、発想そのものは決して珍しくないのだが、この作品の特徴は現代のロサンゼルスに蘇ったサムライが大冒険を繰り広げないところにある。並みの映画ならサムライに胸の空くような活躍の場を与え、一種のヒーロー映画にするだろう。ところが、藤岡弘、演じるヨシミツはなぜ自分がそこにいるのかわからないままトラブルに巻き込まれ、最後は警察によって射殺されてしまう。
言語や文化の違いだけではなく、時代まで隔てられた人間同士が果たして理解し合えるのかというテーマが、リアリティ十分に描かれている点がこの作品の特長だろう。ヒロインであるジャーナリストのクリスがカタコトの日本語でコミュニケーションを図ろうとするが、現代日本語では戦国時代のサムライと意思疎通はできない。そのため、言葉もわからず、価値観も共有できないまま物語は結末を迎えることになる。また、いきなり現代のロサンゼルスに飛び出したサムライが、そうそう自由に動き回れるはずもなく、彼が巻き込まれる(巻き起こす?)事件もやけにちっちゃい。おそらく、現実もそういうものなのだろう。ドラマティックに展開しないところが潔く感じられる一方、期待しすぎるとがっかりする作品である。
蛇足ではあるが、逃げ出したヨシミツにクリスが差し出すのが日清のカップヌードルというところも(一瞬のシーンではあるが)しゃれた演出だった。
作品データ
監督:J・ラリー・キャロル 出演:藤岡弘、、ジョン・カルヴィン、ジャネット・ジュリアン他
製作年:1984年 製作国:アメリカ
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