英雄色を好む ラスト・ウォリアー

ラスト・ウォリアー THE LAST WARRIOR KUNPAN ☆ 【DVD】

画像


  原作はタイの有名な古典文学作品『クンチャンとクンペーン』で、アユタヤには高床式民家のクン・ペーン・ハウスという観光施設もある。「セマ・ザ・ウォリアー」(2003年)や「ソードキング」(2005年)などにつながるタイの史劇アクションなのだが、タイ映画を100本以上所蔵している私にも全く予想がつかないストーリー展開。タイでは誰もが知ってる古典作品が原作だからか、唐突な物語の展開にも言い訳じみた台詞がなく、「それでいいの?」といちいち驚きながら見ることになるのだ。
 舞台はアユタヤ。村一番のいい男で戦士のクン・ペーン、村一番の金持ちのクン・チャーン、村一番の美女のピムという幼なじみ3人の三角関係を軸に物語は進む。クン・ペーンはピムと結婚するが、とにかくモテる男なので、すぐにピムの召使いの女性と浮気。ピムはショックを受けるが、ほどなくクン・ペーンは国王の命でチェンマイに出征。クン・ペーンは現地の実力者の娘を人質としてもらいうけて2人目の妻とし、郷里に帰ってみるとクン・チャーンが「夫は戦死した」と偽ってピムを自分の妻としていた。クン・ペーンの独りよがりな態度にあきれた国王はクン・ペーンの地位や財産を没収して彼を追放する。放浪しながら魔術を体得したクン・ペーンは山賊の娘を妊娠させるが、山賊に命を狙われていることを知ると彼女の腹から胎児を取り出して黒魔術により、我が子を自分の守護霊とする。みたび郷里に戻ったクン・ペーンは、クン・チャーンの妻であるピムとの間に息子をもうけるが、ここでも国王の怒りを買って地下牢に幽閉される。成長したクン・ペーンの息子はアユタヤ軍の大将として出征し、釈放されたクン・ペーンもまた戦場に赴き、アユタヤに勝利をもたらす。ところが、帰郷するとクン・チャーンとの間でピムの取り合いが起こり、堪忍袋の緒が切れた国王は1人の男を選べないピムの首を刎ねてしまう。
 二転三転する物語の展開もさることながら、自分勝手で場当たり的な登場人物たちが特徴的。ヒーローであるはずのクン・ペーンは修業時代に師匠から「性欲におぼれるな」と戒められていたにもかかわらず、自制がきかない。クン・チャーンはとにかくピムが好きで仕方がなくて、人妻になっても諦められない。クン・ペーンに比べれば人間的にもまともなのだが、内山信二に似た外見で損をしている。そしてヒロインのピムが一番問題なのかもしれない。あっち行ったり、こっち行ったりで、最後はどちらか一方は選べないと断言して国王の怒りを買う。また、国王にしても、捕らえたり、追放したりしながらも戦争になるとクン・ペーンを頼る始末。
 西洋、中国、日本の史劇アクションは数々あるが、このようにいい加減な登場人物をずらりと揃えた作品は寡聞にして知らない。もっとも、根底にあるのがタイの「マイ・ペン・ライ」精神と考えれば納得できないこともない。

 真面目に見ようとしたら怒り出す人もいるかもしれないが、「見所」や「考え所」は多数。同じアジアというくくりではとても理解不可能な、タイという国の文化の奥深さをしみじみ感じさせる興味深い作品である。

作品データ
監督:タニット・チッタヌクン 出演:ワッチャラ・タンカプラッス、 ボンゴット・コンマーライ他
製作年:2002年 製作国:タイ


ラスト・ウォリアー [DVD]
トランスフォーマー
2005-06-03

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by ラスト・ウォリアー [DVD] の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル

この記事へのコメント

  • HIRAKATU

    サンプルジャケなら意味がないです。いちファンとしてお願いしたいです。高画質ジャケをおねがいしたいです。今まででしたら閉鎖をねがいします。
    2013年01月13日 20:34

この記事へのトラックバック