麺屋台を営むバスは足の不自由な娘と2人暮らしであるが、夫の作った借金を抱えて苦しい生活を送っている。そして彼女の作るラーメンは、彼女の家に受け継がれている人肉団子の入ったラーメンなのだ。正確にはラーメンではなく、タイ料理の米麺のクイティアオで、よくタイの屋台で見かける料理。彼女の夫やその浮気相手、浮気相手の婚約者も彼女によって監禁され、秘伝のレシピで文字通り「料理」されようとしている。虐待されていた過去が、娘の失踪が、男性への不信が彼女を狂気に駆り立てたのか。明確な説明はなく、むしろ意図的に説明を放棄したところにこの作品の深さがあるように思われる。1993年の香港映画に「八仙飯店之人肉饅頭」という猟奇殺人をテーマにした似たような作品があるが、主人公を女性にしたことで凄みは増した。主人公のバスが若くて美人ならば別の意味で見所は増えたのだが、逆にくたびれた中年女性の色っぽさをちらりと垣間見せるところが怖い。ことさらに怖がらせたり、気持ち悪がらせようとしたりせず、死体を解体するときも淡々と仕事をこなすバスを描き、特徴的な映像と相まって独特の印象を残す作品となっている。
とりたてて面白いというわけではなく、単なる中途半端な猟奇モノに過ぎないのかもしれないが、駄作と決めつけるには惜しい作品のような気がした。1976年のタマサート大学「血の水曜日事件」を背景にしているらしく、そのあたりも単純なスプラッター映画と片付けたくない一つの理由なのだが。
作品データ
監督:ティワ・モエイサイソン 出演:マイ・ジャルーンプラ、ラタナバンラン・トーサワット他
製作年:2009年 製作国:タイ
この記事へのコメント
村石太レディ
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藤子・F・不二雄 漫画 の ミートローフを 思い出しました。この映画とは 全然違うかなぁ?漫画同好会(名前検討中